「つながらない権利とは?何をしたら侵害になるの?」「つながらない権利は、世界や日本でどのように取り組まれている?」つながらない権利とは、勤務時間外に企業の連絡に対して応答しないことが許される権利です。この記事を読めば、つながらない権利の内容や、何をしたらつながらない権利の侵害になるのかを把握し、個人や企業で健全な運用ができるでしょう。この記事を読めば、以下のことが分かります。ぜひご覧ください。つながらない権利の概要つながらない権利の侵害となる例海外での展開事例や日本での認知・需要つながらない権利に取り組んでいる企業事例つながらない権利とはつながらない権利とは、勤務時間外や休日に企業から送られる電話やメールに対して応答しないことが許される権利です。テレワークの働き方が増えたことで、離れた場所でもスムーズに連絡が取れ、柔軟な働き方が可能になった一方、電話やメールで一日中つながることができるため、従業員にかかる精神的ストレスも増えています。「燃え尽き症候群」や、スマートフォンの通知が来ていないにもかかわらず、振動しているように感じる「幻想振動症候群」などが問題になっています。つながらない権利を実施すれば、労働者が企業からの連絡を気にすることなく休息を取ることに集中できるでしょう。ワークライフバランスが取りやすくなるため、心身の健康を保てます。何がつながらない権利の侵害となるのかつながらない権利の侵害は、上司から部下、経営層から社員といった、上から下の立場の人へ気付かないうちに行われ、常態化しやすい傾向があります。従業員全体で、どのような行動がつながらない権利の侵害となるのか把握しましょう。休日や時間外や深夜にメール・電話をする緊急の用事を除いて、営業時間内でも問題がない通常の業務連絡を休日や勤務時間外におこなうことです。特に、深夜に連絡が来ると、電子機器を触ることによって脳が覚醒し睡眠の質が下がるため、翌日の仕事の生産性にも悪影響が出る可能性があります。つながらない権利の侵害例上司から部下へ、金曜の深夜に週明けの業務内容をメールで送付し、返信を求めるチームメンバーから担当者へ、有休日にその日でなくてもよい業務の進捗確認の電話をする長期期間中に連絡を取るGW・夏季休暇・冬季休暇の企業指定の長期期間中はもちろん、慶弔休暇や傷病休暇での長期休暇にも緊急でない業務連絡をおこなうのは、つながらない権利の侵害となります。つながらない権利の侵害例経営幹部が従業員に対して、夏季休暇に緊急でない業務連絡をメールでおこない、返信を強要する上司が部下の慶弔休暇中に、休み明けでもよい内容の業務確認を電話でおこなう海外での展開事例海外ではつながらない権利について法制化が進んでいて、フランスを皮切りにイタリア、イギリス、ベルギーなどEU諸国を中心に活発化しています。フランスで2017年に法制化つながらない権利は、2016年にフランスで労働基準法の中に組み込まれたのが始まりです。その後、2017年に法制化されました。具体的な内容としては、従業員が50名を超える場合には、つながらない権利について労使で協議をおこない、労働協約を締結することを義務付けています。ベルギーで公務員に導入ベルギーでは、2022年2月1日より、公務員に対して、例外的かつ不測の事態の場合を除き、勤務時間外に電話に応答しないことが許されるようになりました。また、例外で不測の事態である場合の具体例は明記されていませんが、労働者は労使との関係でつながらない権利の合意を取ることができます。ベルギーの副首相であるペトラ・デゥスッテル氏は、つながらない権利を持つことにより、「過度の仕事のストレスと燃え尽き症候群」に対処できるようになるだろうと述べました。また、「より良い集中力、より良い回復、より持続可能なエネルギーレベルなど、ポジティブな幸福の結果に結びついている」と主張しています。日本での認知や受容日本でも働き方改革やコロナ禍によりテレワークの働き方が浸透した中で、つながらない権利の認知が進んでいます。つながらない権利が守られるシステムを作ったり、ルールを明示したりするなど、企業と労働者の間で、独自の取り決めをおこなう企業があることを確認しましょう。法制化はされていない日本ではつながらない権利については、厚生労働省の「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で議論はされているものの、法制化には至っていません。(2022年8月現在)検討会においては「テレワークの場合における労働時間管理の在り方」について、業務を効率的に進められる一方で、長時間労働になる可能性があり、過度な労働にならないよう留意する必要があるとされています。またつながらない権利についてフランスの例に触れ、日本でも企業が労働者に対して取り組む際の具体例を提示しています。労働者が「この時間はつながらない」と希望し、企業もそのような希望を尊重しつつ、時間外・休日・深夜の業務連絡の在り方について労使で話し合い、使用者はメールを送付する時間等について一定のルールを設けることも有効である。例えば、始業と終業の時間を明示することで、連絡しない時間を作ることや、時間外の業務連絡に対する返信は次の日でよいとする等の手法をとることがありうる。企業は労働者と相談しながら、独自の制度やガイドラインを作成することで、従業員のつがらない権利の実現が可能になるでしょう。厚生労働省|これからのテレワークでの働き方に関する検討会適用している企業事例企業がつながらない権利について独自に取り決めをおこなっている例があります。「三菱ふそうトラック・バス」では、2014年から、長期期間中に送られるメールを自動削除するシステムを全社員に導入しました。自動削除と同時に後日メールの再送信を要求する旨が自動送信される仕組みです。IT企業の「イグナイトアイ」では、勤務時間外の深夜や早朝、また土日・祝日の休みのメール、電話を禁止しました。休日にメールを受信しても、休みである旨が自動返信されるようになっています。企業で整備する際に気を付けること企業がつながらない権利について独自の取り決めをする際は、従業員が内容を見たらその規範に従って行動を起こせるような、具体性のある事項を作成しましょう。下記に、取り決め事項の例を記載しますので、参考にしてください。平日の勤務時間外である○時〜○時までは、従業員は緊急の事態を除いて、メールを送付しないメールの受信があった場合も、翌日の○時以降に返信すればよい緊急事態とは、○○のことを指すまた、担当者がいなくても業務がおこなえるようにマニュアルを作成することで、業務の属人化を防げます。属人化が防げれば、担当者の勤務時間外や休日の際でも、ほかの従業員が業務対応をできるため、その人に確認連絡を取らなくても、円滑に作業が回ります。つながらない権利の確保につながるでしょう。つながらない権利でワークライフバランスの確保をつながらない権利は、勤務時間外や休日などにメールや電話の連絡を拒否できる権利で、テレワークの普及とともに世界で法制化が進んでいます。日本でも議論は進んでいますが法制化はされていないために、企業と労働者の間で独自のルールを定め、ワークライフバランスの確保を目指してください。つながらない権利が実現すれば、休息が十分に取れ、生き生きとした生活を送れるとともに、仕事に取り組む際の高い生産性につながるでしょう。