Ubieでプロダクトデザイナーを務める村越さんは、Ubieのミッションである「人々を適切な医療に案内する」を、プロダクトとその体験の設計を通じて実現することをミッションにしています。ユーザーインターフェースだけでなく、その手前のリサーチワークから行い、患者さんそれぞれの背景や行動を細かく理解して、プロダクト改善に生かしているといいます。2023年、症状検索エンジン「ユビー」3周年記念LPの制作においてcaroaと協業しました。本記事では、なぜcaroaを選定したのか、本プロジェクトの進め方、デザインパートナーとの関係性のあり方など、caroaのプロジェクトメンバーとともに語り合いました。(以下敬称略) 初回からワイヤーフレームを提示されたことで「話が早い」と感じcaroaに依頼外部パートナーとの協業は稀なケース村越:弊社が提供する生活者の適切な医療へのかかり方をサポートする受診支援サービス「ユビ―」が、2023年4月にサービス提供開始から3周年を迎えることになり、そのPRの一環で特設のLPを立ち上げることになったのがこのプロジェクト開始の背景でした。話が立ち上がったのが2023年の春で立ち上げまでクイックに進めなければならなかったことや、社内のデザイナーがフルにプロジェクトにリソースを割けない状況もあったので、それであれば外部のパートナーさんと一緒に進める方がいいだろうと判断しました。弊社はコーポレートサイトや採用サイトをStudioで実装しており、かつ立ち上げまでの期間を考えても実装はノーコードツールをベースに進める方が効率的だろうという観点から、Studioでの実装を念頭に置き、パートナーさんの選定を始めました。僕らは実はそれまで、外部のデザインパートナーと一緒にデザインワークを進めるケースがほとんどありませんでした。なので僕は選び方もあまりわからず、とりあえずStudioパートナーのサイトから探しました。気遣いのおかげで期日までに完成できた村越:最初に一度、相談ベースでまだ契約云々ではない打ち合わせをさせていただいた段階で、打ち合わせ資料の中にワイヤーフレーム的なものがすでに入っていましたよね。それで「話が早いな」と思ったのです。水元:お急ぎのお話だったので、最初の打ち合わせでいただいたお話の内容でいったんワイヤーフレームを作ることで、納期までも少し短くなるのではないかと思いまして。それをお見積もりと一緒に出させていただいたんですよね。村越:あのお気遣いがなかったらたぶん、社内が求めていた期日までには完成できなかったと思います。「発注者と受託者という関係ではやりづらい」通常とは異なる制作プロセスを選択お互いにリアルタイムでコメントし合う、「チーム感」あるプロジェクトにー今回、Ubie様とは、最初から制作過程のFigma画面を共有し、都度コメントいただきながら一緒につくっていくような体制でプロジェクトを進行。そのプロセスを選んだ背景について、村越さんはこのように言います。村越:僕自身、過去のキャリアでもクライアントワークをしている期間の方が長いのですが、その中でどうしても「発注者」と「受託者」に分かれてしまうのを感じていました。それだと自分も相手もやりづらいだろうな、と感じていて。外部パートナーの方とも、やるなら楽しくやりたいなと思っていたというのが1つです。もう1つが、レビューを受けるときに、「できあがったものを提出する」という従来の形だと、設計意図からすべて説明していただく必要がありますよね。さらに僕らはそれを咀嚼して、打ち合わせの場でコメントしたり、。社内の関係者に確認をお願いしなければならない。。それをショートカットできないかと思ったのです。そこで作業中のfigmaファイルを共有していただいて、一緒にコメントを出し合いながらやっていくやり方の方がいいなと思いました。サイトデザイン全般をメインに担当したcaroaのデザイナー・森田がまず、いろいろなサイトでビジュアルイメージのアイデアを溜め、落とし込んでいきます。それに対して、双方のプロジェクトメンバーがコメントをし合う形となりました。森田も「本当は何を伝えたいのか、核となる部分はどこなのか、Ubieさんにしっかりヒアリングをしつつ、caroaのメンバーみんなで情報整理を行いました」と振り返ります。クリエイティブディレクターの岩田は、このスタイルでも非常にやりやすかったと感じているようです。岩田:村越さんは「絶対にこうしてください」と指示するのではなく、私たちが「これがいいと思います」と伝えたことをしっかり受け取った上でコメントをくださっていました。クライアントワークだと、受注側の言うことが絶対になりやすいのですが、お互いにコメントし合ってつくらせていただいたので、チーム感があるプロジェクトでした。村越:レビューの観点は2つあると思っています。1つは、会社のメッセージングにおいて絶対に譲れないところ。もう1つは、表現やスタイリング、情報設計や読みやすさ・わかりやすさにかかわるところ。これは結構好みがわかれるところですし、僕らの理想のイメージが正解だとは限りません。なので、そこは無理に定数化しないように、お互いに最適解を探っていこうと思っていました。かつ、その方がお互いの制作物に対するコミットメントが高くなるという仮説もあったのです。村越さんのいう「会社のメッセージングにおいて絶対に譲れないところ」について、森田も強く意識していました。症状検索エンジンは、不安や焦りなど心穏やかではないときに使われるプロダクト。だから全体のオブジェクトとしても、角がなく、かなりマイルドなもの、複雑さのない、単純でわかりやすい図形を使うことで、このサービスの優しさが出るのではないか?そんな風に、サービスを使う人の年齢層や心持を深く考えたからこそのアウトプットになっています。また、「”周年感”を出すために、ところどころでさりげないアニメーションをつくり、ちょっとしたワクワク感を意識した」とも語っていました。プロジェクトマネージャーの水元も、今回の制作プロセスに手ごたえを感じています。水元:やり取りのスピードも早かったですし、最初からカジュアルにスタンプをつけながらやり取りできるような雰囲気をつくってくださって、それがやりやすさにつながったと思います。Ubieさんのプロダクト側の方にも入っていただき、「これはどういう意図で作っているのか」という興味としてのコメントも入っていましたよね。そうやってフランクに意見交換ができたことが、私たちとしても「一緒につくっている」という感覚を強く持てましたし、ユビーらしい表現について考えるいい機会になった気がします。「内製」と言っても違和感のない成果物ができたやり取りがリアルタイムだからこそ、最後の最後までこだわれた村越:やってみてよかったと思います。できあがったLPは社内的にも好評なコメントが来ていますし、一般公開させていただいた後にも、一般の方々からデザインに対してポジティブな反応をいただきました。そこはすごく良かったです。たぶん、「外部のパートナーを使っています」と言わなければ、内製で作ったと思われるくらいにユビーらしさが出たLPになったと思います。結果的には、やり取りのラリー回数はかなり多かったと思います。ですが、細かいものも含めて常にコメントし合ったり、途中は“もくもく会”みたいになったりしながらも、いい表現のバランスを探ることができました。短い期間だったにもかかわらず、最後の最後、ギリギリまで行間など細かいところの調整をして完成度を高めることができたのは、こういうプロセスで取り組めたからかなと思っています。水元:村越さんがちょこちょこFigmaに入って見てくださって、私たちも進捗を隠さず共有しながらできたことはすごくよかったです。逆に、村越さんでなければ、このような進め方ができたかどうかわからないなとは思いました。村越さんは、他のプロダクトデザイナーさんの意見も含め、社内の取りまとめをすごくよくしてくださったと思います。おかげでスムーズに進みましたし、いいディスカッションができました。岩田:たぶん、私たちが想像する以上にすごい労力がかかっているのではないかなと思います。いろいろな人の意見を吸い上げて、それをきちんと取捨選択して届けてくださって。その上でのディスカッションができるかどうかで、成果物のクオリティも変わるので、担当者さんの働きは本当に大事だなと感じました。村越:窓口に立つ人は、取りまとめることに加えて、「こうしたい」という想いを持っているかどうかが重要だと思っています。それは一定、僕の中にはあった。だから社内の他の人たちのコメントに対して、取り入れる、取り入れないの判断は意識してできたかなと思っています。それが、スムーズで質の高いアウトプットにつながったのかなと思います。改めて、症状検索エンジン「ユビー」3周年、おめでとうございます!私たちcaroaも、村越さんとプロジェクトの分解をし、共創できて非常に楽しいプロジェクトでした。有意義な時間をありがとうございました。今後ともぜひよろしくお願いします。