原文:https://www.invisionapp.com/report-assets/hiring-report.pdf本記事は2019年に公開された情報を和訳したものです。英文を翻訳したものであるため、詳細や正しい表現は英文の原文を参照ください。「求職者が転職先を探す際に最も意識すること」そして「採用担当者が考える、候補者に最も必要なスキル」とはなんでしょうかプロダクトデザイン関連の採用に関して、InVisionが2019 Product Design Hiring Reportで興味深いデータを公表しました。そのデータを翻訳・加筆修正し前編・後編に分けてわかりやすくお伝えします。前編では、採用に関して企業が意識すべきポイントを主にまとめました。今回の調査目的この調査結果を通して採用担当者は優秀なデザイン人材を惹きつけ採用し、さらにデザイナーを魅了し続けることができ、人材の流出を防ぐことができます。ここで得たヒントが、プロダクトデザイナーがキャリアを伸ばし、デザイン業界への参入をする手助けになります。調査対象プロダクトデザイナーデザイン専攻の学生デザイナーの募集・採用担当責任者調査地域:世界の主要市場(アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド)プロダクトデザインの需要アマゾン、スターバックス、IBM、マッキンゼーなど、世界で最も優秀で成熟した企業は、デザインを企業戦略の重要な要素として取り入れています。デザイン主導のビジネスは競合他社を大きく引き離すことが証明されており、熟練したデザイナーの需要が高まっています。実際、デザイン成熟度が高い企業の92%は、デザインチームの努力と組織の収益との間に相関関係があります。今、デザイン・テクノロジー業界において、プロダクトデザインは最も急速に発展している分野のひとつです。InVisionの2019年プロダクトデザイン採用レポートによると、70%の人事が過去1年間にデザインチームの人数を増やしたことがわかりました。そしてその勢いが衰える気配はありません。調査回答者は、来年にかけてデザインチームが平均21%成長すると予想しています。さらに、人事担当者は過去1年間に3種類のデザイン職を採用し、今後1~2年の間にさらに4種類のデザイン職を新たに採用すると予想しています。今日、企業の価値はその製品とユーザーエクスペリエンスによって定義されます。そのためプロダクトデザイナーは、小売業、自動車メーカー、ハイテクベンチャー企業など、あらゆる企業の成功に不可欠な存在となっているのです。実際、プロダクトデザイナーの需要はかつてないほど高まっています。InVisionの調査によると、5人に4人(81%)が少なくとも毎月、3人に1人(34%)が毎週、採用担当者から連絡をもらっていることが明らかになりました。連絡を受けたプロダクトデザイナーのうち61%が、昨年と比較してリクルーターからの連絡が増えていると回答しています。このように、プロダクトデザイナーの給与が上昇傾向にあるのは驚くべきことではありません。実際、プロダクトデザイナーの84%は過去1-2年の間に昇給しており、今後1-2年の間に20%近くも報酬が上がると予想されています。サンフランシスコのベイエリアやニューヨークのような競争の激しい市場では、優秀なデザイン人材は全国平均よりもさらに高い昇給を期待できます。プロダクトデザイナーの需要が高まり雇用市場の競争が激しくなるにつれ、優秀なデザイン人材を採用し、維持することは組織のビジネスの成功にとってより重要であり、より困難になってきています。同様に、意欲的なデザイナーも既存のデザイナーも、採用され出世するためにスキルを向上させなければならなくなってきています。採用担当者が意識している重要なことデザイナーの需要は高まっていることは分かりましたが、採用する企業側はどのように優秀な人材を確保すれば良いのでしょうか?すべてのブランドは、顧客に喜ばれる製品を作ろうとします。規模や業種に関わらず、自社に最適なデザイナーを採用することは、最高の顧客体験とビジネス成果を提供するために非常に重要なのです。実際、4分の3近くの企業が、デザインによって顧客満足度とユーザビリティを向上させたと回答しています。それだけでなく、約70%の企業で、デザインは製品開発と企業ポートフォリオのあり方を変えています。しかし、より多くの企業がビジネス戦略の一環として強力なデザインチームを持つことの重要性を認識する中、多くの採用担当者が優秀な人材でチームを作ることに苦心しています。この調査結果を通じて、求職者が他の企業ではなくある企業を選ぶ理由は何か(金銭的なもの以外で)、雇用ネットワークサイトで候補者にアプローチする理想的なタイミングはいつか、どのような属性が必要かなど、採用・面接戦略のレベルアップに必要な洞察を皆さんにお伝えします。どのように企業は優秀なデザイナーを確保できるのか繰り返しになりますが、経歴やブランド認知度、予算は違っても、企業の採用担当者に共通していることそれは、優秀な人材を確保するのに苦労していることです。採用担当者はどのようにして人材獲得戦略を改善すればよいのでしょうか。その第一歩は、求職者が新しいキャリアを評価する際に、何を最も重要視しているかを理解することです。この情報をもとに、企業はデザイナーが次の雇用主に対して最も重視する資質を強調することで、より戦略的にデザイナーにアピールできるのです。多くのデザイナーにとって、有名なデザインブランドは重要でないことがわかりました。新しい仕事を選ぶ際に最も重要な要素は「強いデザイン文化」でした。では、強いデザイン文化を持つとはどういうことでしょうか。デザイン文化とは、単にデザイン最高責任者を雇うことではありません。デザイン思考の原則に根ざし、ユーザーエクスペリエンスを最優先する職場環境のことを指します。強いデザイン文化を持つ組織は、ユーザーの生活に付加価値を与えるような体験を生み出すことに重点を置いているのです。続いてIDEOが定義している強いデザイン文化の特徴をご紹介します。IDEOが定義する強いデザイン文化の5つの特徴1. 絶え間ない好奇心がある会社の誰もが常に質問をし、その答えとなる情報を得るためにデータを活用する仕組みがあること2. 頻繁な試行錯誤がある常に可能な限り多くの解決策を模索し、その結果、より多くのローンチを成功に導いている社員が多い環境3. チームを超えたコラボレーションがあるさまざまな業種の異なるチームが、互いに協力し合って仕事をできる環境4. 意図的なストーリーテリングがあるプロジェクトリーダー、デザインリーダー、情熱的なチームメンバーなど、そのアイデアを本当に自分のものにできる人が担当している企業。アイデアを自分のものにして勢いと興奮を生み出すようなストーリーを語れる環境・人が周りにいること5. アイデアを増やす習慣がある豊富なアイデアを出すことが毎日の習慣になっている企業。これによりチームは繰り返し作業を行い、素早くフィードバックを受けることができます。就職先で最も重要視する要素また、アンケート参加者には、強いデザイン文化に加え、次の就職先で最も重要視する要素をいくつか質問しました。これにより、特に中小企業はデザイナーとコミュニケーションをとる際に自分達がどのような側面や代償を強調すべきかというヒントを得ることができます。実際に就職先を選ぶ際、プロダクトデザイナーは企業に対し以下の点を重視することがわかりました。企業に困難な問題を解決する能力があるか意義のある仕事があるかリモートワークや柔軟な働き方ができるか新しいデザインチームで、実験的な試みを行い、成果を上げる機会が与えられるか影響を与え、チームの方向性を決定できるかデザインで有名な企業でなくても、上に挙げたような求職者が重視するさまざま項目を抑えることで優秀なデザイナーを確保する可能性が広がります。また、デザイナー人材を確保する際に時期を見極めることも大切です。プロダクトデザイナーが転職を検討し始める時期は、平均して入社後10〜12ヶ月後ということがわかりました。この時期、候補者はリクルーターの働きかけに最も反応するはずです。また、37%のデザイナーが平均2年間その職場にとどまっていることもわかりました。これらのデータをうまく活用すれば、ターゲットを明確に絞りやすくなり有望な人材を獲得する可能性を広げることができます。おわりに今回のデータから、プロダクトデザイナーの採用状況について、企業側が意識すべきポイントがいくつか見えてきたと思います。後編ではデザイナー側の視点に着目し採用状況を紐解いていますのでそちらもぜひチェックしてみてください。