「タイパ」(タイムパフォーマンス)という言葉をご存知でしょうか。「かけた時間に対する効果」を重視するというZ世代の価値観を表す言葉として、昨今その潮流を見せています。「時は金なり」と言いますが、時間=人生と言えるくらい、時間には価値があることは、あなたも感じていると思います。一方で、従来のような長時間労働で人生を埋め尽くしてしまう人、時間効率化自体が目的となって結局あくせくした生活になってしまう人も多くいます。そんな方々に向けて本記事では、「時間価値」という考え方を提示します。「時間価値」を軸に考えることで、働き方や生き方に対する見方が大きく変わるかもしれません。労働時間が長いのにそれに見合うだけの成果を出せていない惰性で時間が過ぎてしまうことがあるもっと時間を有効に使いたい「なぜあの人はあんなにゆとりがあるのに成果をあげられるのか」と疑問に思うこれらに心当たりのある人は、本記事を読み進めてみてください。※本記事の「時間価値」は、金融用語としての「時間的価値」ではなく、一般的に人々が時間に対して感じる価値を指します。1.時間の価値が変わってきている20世紀と21世紀では、時間の過ごし方が大きく変わってきています。なぜなら、変化のスピードが圧倒的に早くなっているからです。21世紀に入ってからの20年で見ても、2001~2010年よりも、2011~2020年の方が変化のスピードは加速しています。このような変化のベースとなっているのは、言うまでもなく、テクノロジーの進化です。インターネットが普及し、大幅に仕事やコミュニケーションの効率化が図られました。スマホや高速通信も浸透し、場所的な制約も少なくなってきています。そんな中で、「ちょっとした時間」の価値が高まってきていることにお気づきでしょうか?数十分、数時間という「まとまった時間」がなくても、数十秒~数分の「ちょっとした時間」があれば、LINEを返したり、Twitterでつぶやいたり、TikTokの動画を見たりすることができます。あなたもこうした時間の使い方を、すでに当たり前にしているのではないでしょうか。電子レンジだけでできる料理が重宝されたり、乾燥機付き洗濯機の需要が高まっているのは、食材を焼いたり煮たりして調理をする時間や洗濯物を干す時間、こういった「ちょっとした時間」さえも、「自分の時間」として有意義に使いたいと人々が考えるようになったからにほかなりません。ですが実は、このような時間の使い方は、スマホやテクノロジーの進化がなければできませんでした。考えてみてください。たとえば、50年前に子育てをしていた人たちが、家事が10分だけ早く終わるからといって、対価を払って乾燥機付き洗濯機を手に入れようとしたでしょうか。きっとそこまでの価値を10分という時間には感じられなかったのではないでしょうか。「ちょっとした時間」を有効に使えるツールが出てきたことによって、いわゆる「スキマ時間」の価値が急激に上昇してきているのです。「時間を有意義に使おう」ということは何十年も前から言われてきました。どんなに裕福な人でも、貧しい人でも、社会的地位がある人もない人も、24時間という時間はすべての人に平等に与えられています。あなたも、「そんなことは当たり前だろう」と感じているかもしれません。ですが、上記で説明したように、「時間を有意義に使おう」というところの「時間」の意味が今と昔とでは変わってきているのです。 2.時間価値の高い人・低い人あなたは自分の時間価値を把握していますか?自分の時間価値を認識するわかりやすい例は時給です。時給1000円の人と1万円の人と100万円の人とでは、時間価値が全く異なることは感覚的にもわかると思います。そして今後は、さらにこの差が広がっていくと考えられます。戦後の日本では、製造業を中心に発展してきました。それを下支えしたのは、均質な労働力を集積させ、同品質のモノを大量生産するシステムでした。ですが現代は、大量生産の時代は終わり、「付加価値」を提供するサービス業が増えました。物質的に満たされた現代の人々は、質的な幸せを求めるようになり、「時間価値」が重視されるようになりました。働き方に関しても同様です。「仕事量を増やして給料を上げる」よりも、「仕事の質や密度を高めて成果を出す」ことにフォーカスが移っています。これはつまり、時間価値をあげることに他なりません。現代の職業人をマッピングしたマトリックスを紹介します。縦軸に収入、横軸に時間を置いたこの4つの分類は『時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?』(日本経済新聞出版)という書籍からの引用となりますが、非常にわかりやすい分類になっています。左上に来るのが「伝統的なエリート」、「お金はあるけど時間がない」という層です。主に旧来の大企業のホワイトカラー、コンサルティングファームに勤める人、官僚の多くが当てはまります。給料は高いものの、労働時間が長い傾向にあります。真面目に努力することができ、勉強熱心でIQも高いため、クリエイティブな仕事をすることもできる人が多いと思われますが、給料が下がることに恐怖を覚え、労働量を増やす方向に努力してしまうのも特徴です。左下の人たちは、「真面目貧乏」と呼ばれ、「お金も時間もない」層になります。左上の「伝統的エリート」と共通しているのは真面目に働いている人が多いこと。目の前の仕事をしっかりこなすことを重視していますが、給料は相対的に少ない層です。ブラック企業と言われるところで働く人たちなどが該当します。右上の人たちは「クリエイティブクラス」「新興エリート」と呼ばれ、「お金も時間もある」層です。時間価値の高い人たちだと言えます。ベンチャー企業の創業者などがここに分類されることが多いです。意識的に楽をしようとしているわけではないものの、既存のルールで競争する気はありません。そこには未来がないと感じているので、違うフィールドを探したり開拓したりします。 右下には「終わりなき日常を生き続ける人たち」が入ります。「お金はないけど時間はたっぷりある」という層です。代表的なのはフリーターと呼ばれるアルバイトを中心として働いている方々です。左下の「真面目貧乏」の人たちと同じ仕事をしていても、あくせく働くというよりは、定時にはさっさと帰ります。時間に追われていないので、比較的幸福度は高く、楽しく暮らしている人も多い。右下と右上は世間からの見られ方はまったく違うものの、共通点が多くあります。実際、ソーシャルゲームのユーザーはこの2タイプの人が多いようです。見栄や世間体にはあまり関心が高くない人たちだと言えます。これまでは、左上の「伝統的エリート」が圧倒的に勝ち組と思われてきました。ですが、左上と左下の人たちは、他者との比較・競争の中で生きているため、生きづらさを感じやすく、メンタルヘルスに支障をきたしてしまう人も多いと言われています。世界的な需要として、右上のクリエイティブクラスの需要が高まっている一方で、価値観として右下の「終わりなき日常」で無理なく身の丈に合った生活をしたいと考える人も増えています。詳しくは以下の記事で紹介しています。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22padding-bottom%3A%2052.5%25%3B%20padding-top%3A%20120px%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fcaroa.jp%2Ftimes%2Farticles%2F0ENbvBkA%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fapi%2Fiframe%3Furl%3Dhttps%253A%252F%252Fcaroa.jp%252Ftimes%252Farticles%252F0ENbvBkA%26amp%3Bkey%3De5be894d7ea381e2eda2216e6d6fe012%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%3D%22%22%20src%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fembed.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E3.時間の効率化よりも快適化が求められているこれまでは、時間効率が非常に重視されてきました。時間効率の良い商品・サービス・ビジネスモデルが重宝されてきたのです。例えば製造業や流通業では、バリューチェーンを効率化することが当たり前の経営戦略として多くの企業で取り入れられてきました。具体的には、スーパーやコンビニに並べられる100円のジュースをいかにして90円や80円にしていくか。そこで競合と争ってきたわけです。しかし今の時代は、100円のジュースを90円にする努力はこれまでのような価値を持たなくなってきています。少なくともこれまでほど売り上げの増加につながるものではなくなりました。物質的に満たされた日本では、モノは飽和し、「安くて良いモノ」がみんなに行き渡っています。近年、若者の間では「安くて良いモノ」よりも、「多少高くても質の良いモノ」や「製作者のこだわり・ストーリー性を感じるモノ」が好まれる傾向が高まっています。そこに値段以上の価値を感じる人が多くなっているということです。安くて良いモノはすぐに手に入って当たり前、それだけでは満たされなくなってきたということの証拠です。時間価値を高める方向に舵をきった結果、得られるものが「時間の快適化」です。あなたはリモートワーク中のランチを考えるとき、何を判断基準にしますか?これまでのビジネスパーソンは、「安くて手軽」「そこそこ美味しい」などを優先し、牛丼やハンバーガーショップの店舗やテイクアウトを利用してきたでしょう。現代では、この判断基準が多様化しています。「ヘルシーさ」を重視する人もいれば、仕事との切り替えをするため「リラックスできる空間」を重視する人もいるでしょう。あるいは、「移動の手間を省く」ためにウーバーイーツを利用する人もいます。ただ「安くて手軽」という理由だけでは選ばなくなっているのです。特に、ウーバーイーツの活用が増えているのは、時間の快適化を重視していることの表れだと考えられます。「時間の効率化」では、時間を節約することに価値が置かれます。一方の「時間の快適化」は、時間をいかに豊かに、クリエイティブに過ごすか、創造的に過ごすかという方向で価値を追求しています。この2つは、どちらかだけではなく、使い分けることが必要です。時間の効率化によって生まれた「スキマ時間」は、それ自体が目的なのではなく、最終的には豊かな時間を過ごすための手段として効率化を行うことです。仕事や家事などをテクノロジーの力で時間を効率化する。そこで生まれた時間を使ってさらに仕事を行う。これでは効率化の無間地獄です。何のために効率化してきたのかわかりません。効率化ばかりを目指してきた現代人には、今こそ時間の快適化という方向性が必要なのです。詳しくは以下の記事で紹介しています。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fcaroa.jp%2Ftimes%2Farticles%2FMwXh1R_r%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fapi%2Fiframe%3Furl%3Dhttps%253A%252F%252Fcaroa.jp%252Ftimes%252Farticles%252FMwXh1R_r%26amp%3Bkey%3De5be894d7ea381e2eda2216e6d6fe012%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%3D%22%22%20src%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fembed.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E4.細切れの時間を売り買いできる時代になったスキルシェアマーケットが広がっています。「ココナラ」や「ランサーズ」「クラウドワークス」などは「スキマ時間の売り買い」によって成り立っていると言っても過言ではありません。たとえば、家事代行などがその典型かもしれません。家事をする時間も惜しみ、クリエイティブな活動に充てたいといった人たちが、代行者の時間を買うことによって自分のスキマ時間を生み出しているのです。これまでは、「わざわざ家政婦を雇って依頼するほどのことではないし、そんなお金もない」「家事を外注するなんて倫理的によくない」といった価値観から、睡眠時間を削って家事を行う人、本当はフルタイムで働きたいのにやむなく時短勤務をしている人も多くいました。現代ではそういった価値観が薄れたり、「時間は有限である」ことを痛感した人たちの発信に触れたりしたことで、「ライフスタイルに合わせて家事や育児にも外注を取り入れる」ことへの抵抗はなくなってきています。その他、「あなたの代わりに行列に並びます」という活動や「結婚式の余興ムービー作ります」といった活動を「副業」としてスキマ時間に行う人も増えてきました。スキルシェアでは、パートのような時間の切り売りではなく、得意なことを仕事にできます。苦手は人に頼み、得意を伸ばしてコツコツ稼ぐ。これが日常生活にまで浸透してきているということです。もちろん本業の経験を活かし、コンサルティングやアドバイザーなどの形で別業界への知見の提供を行っている人もいます。人材や情報の流動性が少しずつ高まってきているのです。これは、ある特定の生産性の高い人々が、生産性の低い人の労働力を買うというシンプルな図式ではありません。どんな人にも、1日の中で高い生産性が求められる時間とそうでない時間があります。そうした1日の中での時間の質の違いを、他人と上手くマッチングすることで社会全体の時間価値が高まっていくということです。これを可能にしたのはもちろん、テクノロジーの進化。これまでは「雇用」「委託」などの契約のやりとりなどに時間がかかっていました。テクノロジーを活用したサービスによって、マッチングと働き始めるまでの時間は大幅に短縮。これに加えて、副業解禁などに伴ってスキルの需要も供給も高まっていることが、スキルシェアマーケット全体の成長に大きく貢献していると言えます。詳しくは以下の記事で紹介しています。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fcaroa.jp%2Ftimes%2Farticles%2F5RUDZAmP%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fapi%2Fiframe%3Furl%3Dhttps%253A%252F%252Fcaroa.jp%252Ftimes%252Farticles%252F5RUDZAmP%26amp%3Bkey%3De5be894d7ea381e2eda2216e6d6fe012%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%3D%22%22%20src%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fembed.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E 5.公私の境目が溶け出すことで時間価値が高まる「ワークライフバランス」という言葉よりも「ワークライフインテグレーション」のように、仕事とプライベートの境界線を曖昧にした生き方を目指している人も増えてきたように思います。これもテクノロジーの発展によるスキマ時間の活用が大きな要因です。今では、スマホで完結する仕事もありますし、リアルなオフィスに行かなくてもできる仕事は大量にあります。スマホを開くと、仕事のチャット、家族からのメッセージ、ECサイトからのメルマガなどが同列のものとして通知されるので、公私の境目がもはや溶け出している人も多いでしょう。この境界の溶け出しこそ、時間価値を高めるものとなります。仕事のチャットを返した数秒後に、プライベートのメッセージに返信することは珍しくない。そんな中では、大量のタスクを短時間でこなせるからです。ワーケーションのように旅先で仕事を行うスタイルも一般的になりつつあります。数年前、YouTubeが「好きなことで、生きていく」というキャンペーンで一気に市民権を得ましたが、それが示すのはまさに公私の境目を曖昧にする生き方の実現です。「遊びを仕事にする」「遊ぶように働く」ことは、その人の時間の使い方を豊かにするもの、つまり、時間価値を高めるものとなります。一方、気をつけなければならないこともあります。時間の配分です。「ワーケーションをしようと自然豊かな土地を訪れてみたものの、結局はタスクが重なり一日中家にこもっていた」などということも珍しくありません。 週末に出かけている時にも、スマホに仕事のメールが届けばそれを開き、その場で対応してしまうこともあるでしょう。本業の勤務時間後に副業をする人も増えています。すると、常にオンの状態となり、リラックスできる時間やプライベートの時間があっという間に削られていきます。そのようにしてワーカーホリック状態に陥ってしまう人もいますから、注意が必要です。詳しくは以下の記事で紹介しています。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fcaroa.jp%2Ftimes%2Farticles%2FQDPWCUeB%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fapi%2Fiframe%3Furl%3Dhttps%253A%252F%252Fcaroa.jp%252Ftimes%252Farticles%252FQDPWCUeB%26amp%3Bkey%3De5be894d7ea381e2eda2216e6d6fe012%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%3D%22%22%20src%3D%22%2F%2Fcdn.iframe.ly%2Fembed.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3Eまとめ本記事では、時間価値についてみてきました。時間価値の高い人と低い人の違いを、4つのマトリクスによって理解していただきました。スキルシェアマーケットの広がりも「時間価値」から捉えることができることを解説しました。「時間の効率化から快適化」は、「コスパからタイパへ」という価値観の変化を象徴しています。そして、「ワーク」と「ライフ」の境目が曖昧になることによって、時間価値はさらに上昇し、豊かな時間の過ごし方になっていくでしょう。このように「時間価値」という考え方を知り、その高め方を知ることで、誰にとっても平等で有限な時間というものをより豊かに過ごせるのではないでしょうか。参考:時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?(松岡真宏、日本経済新聞出版)