日本の企業は人口減少にともなう労働力の低下のなか、ひとりひとりの生産性を上げる必要に迫られています。実際に業務効率化を進めたいけれど、何から始めたら良いか分からないという人も多いのではないでしょうか。この記事では、実現するための5つのステップや個人でできるコツとおすすめツールを解説します。そもそも業務効率化って?業務を行う過程で発生する「ムリ・ムダ・ムラ」を取り除き、効率的に進められる状態にすることを業務効率化といいます。企業経営の三大資源である「ヒト・カネ・モノ」を最大限に生かすためには、「ムリ・ムダ・ムラ」を意識して取り除いていくことが必要です。限られた時間で成果を出すために、業務フローを振り返って問題を顕在化させてひとつひとつ改善していきましょう。実現するための5つのステップチームで業務効率化を行うためには、手順を踏みながら確実に遂行することが欠かせません。調査から効果を検証するまでの5つのステップを確認しましょう。ステップ①:現状を把握する業務でどのようなことをしているのか、毎日の作業フロー、週・月ごとで行うこと、業務の困りごとや課題の聞き込みをチームメンバーにして現状を把握します。また、改善点を見つけるときのヒントになるため、すでに効率化のために実施していることや工夫点も聞いておきましょう。ステップ②:改善すべき点をリストアップ集めた調査結果を分かりやすく整理しましょう。チーム全体としての業務フローや個人の担当しているタスクを細かく記載します。また①と同様にすでに効率化のために行っていることも細かく書き出して、全体のフローとともに見直せるようにしましょう。そして改善すべき箇所をリストアップしていきます。ステップ③:②に優先度をつけるリストアップした改善点に優先度をつけるには、順番と視点を軸に業務改善ができる「ECRS」のフレームワークが役立ちます。効率化するときに取り組むべき項目のEliminate(排除)・Combine(結合)・Rearrange(代替)・Simplify(簡素化)の4つの頭文字を取ったものであり、配置が前にある工程に着手するほど業務改善効果が大きいため、順に沿って進めることで最適化できます。課題をそれぞれの該当項目にあてはめ、優先度をつけましょう。Eliminate(排除)業務フローのなかで排除できる項目がないかを確認。例えば、無駄な会議やメール、電話などを指すCombine(結合)似ている業務を結合。例えば、同じシステムを使う業務を結合し効率化を図るRearrange(代替)作業を何かで代替できないかを考える。例えば、手書きで行っていたタスク管理をツールを使って自動作成できるようにするSimplify(簡素化)より簡単にできないかを考える。例えば、メールでなくチャットツールを導入しコミュニケーションコストを削減ステップ④:③をスケジューリングそれぞれの改善すべき点の、取り組む期間といつまでに終わらせるのかについて、目標を定めましょう。期間を設定することでダラダラと実施することを避けつつ、試行錯誤をして細かな変化による検証を行えるように実施期間にはある程度のバッファを設けましょう。ステップ⑤:効果を検証する改善を実施する前後の変化を検証します。生産性がどれだけ向上したかを記録しておき、次回の業務効率化時のヒントにしましょう。そしてさらなる改善を実施できないか考え、必要であればステップ①の聞き込み調査から繰り返し行ってください。各個人でできる業務効率化のコツ個人でも仕事の取り組み方を見直してみることで、さらに成果を上げることが期待できます。すぐに実施できる項目を整理します。一日のタスクをリスト化その日に行う予定のタスクをすべて書き出し、明確化しましょう。思考が整理されることで、やるべきだと思っていたことが実は不要であることが分かったり、本来行うべきタスクとの振り分けができます。また、一旦書き出して整理できれば頭の中でタスクを覚える必要がなく、仕事を進めるために不要な雑念が消えて目の前の作業に集中できるでしょう。タスクに優先順位をつける重要度と緊急度のマトリクスを使いながら、それぞれの作業に優先順位をつけていきましょう。作業の重要度と緊急度について高いか低いかを評価することで、4種の優先順位分けができるものです。重要度は目的達成や成功の本質的な部分に関わるかどうか、緊急度は締め切りや期限が迫っていて優先的に対応するべきであるかどうかで判断しましょう。リスト化したそれぞれのタスクを評価して下記表にあてはめ、優先順位を明らかにします。第1優先重要度が高い・緊急度が高い第2優先重要度が高い・緊急度が低い第3優先重要度が低い・緊急度が高い第4優先重要度が低い・緊急度が低い時間を決めてひとつのタスクに集中するそれぞれの作業に取り組む時間を決めたら、その間は他のことをせずそのタスクの遂行のみに集中します。ある作業をしている間に、メールを返信したり他のタスクを進めたりするといった複数の作業を短時間で切り替えながら行う「マルチタスク」は、ひとつのタスクに集中して取り組む「シングルタスク」より生産性が40%下がります。生産性を維持するためにもタスクを行うときは、途中で他のものに意識がそらされないようルールを決めておきましょう。例えば、メールを確認しない、チャットツールの通知を切っておく、電話は緊急でない限り出ずにかけ直すなどができます。ホウレンソウ(報・連・相)仕事は同じ目的達成のために複数人で協力して遂行するものであり、より良いものを作り上げるために自分の業務や状況を周囲に伝える「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が欠かせません。それぞれを行うときには、以下のことに気を付けましょう。報告結論から話して、状況が理解しやすいように、具体的な数値を用いて伝える。無駄な話は省く連絡共有事項を関わる人全員に伝えるために、伝えるメンバーに漏れがないか確認する相談相手の都合に配慮したうえで話を切り出す。メールの場合は、いつまでに返事が欲しいのか、手が空いたときで良いのかなど返信の期限を提示するメールやファイルはフォルダ分けする案件や取引先ごとなどカテゴリ別にフォルダ分けをすると、データを確認したいときにすぐに取り出すことが可能です。メールは差出人別やプロジェクト・案件別、対応済みのものと未完了のもの、優先順位別などといった振り分けができます。ファイルのカテゴリ分けは、階層を多くしすぎないことで対象を見つけやすくでき、大分類・中分類・小分類の3段階で分けると分かりやすいです。例えば大分類は部署名、中分類はプロジェクト名、小分類は作業名と設定といった感じです。疲れたら休憩する疲労を感じても無理して仕事を進めることは効率的でないため、意識的に休憩を取りましょう。休憩時には脳を休めて回復させることに専念してください。スマートフォンは脳を疲弊させるため使用せず、軽くストレッチをするなどでリフレッシュしましょう。業務効率化過程の「あるある失敗例」手順通りに実践をしても上手くいかないケースは少なくありません。 チームでよくある失敗例を見ていきましょう。スタッフに浸透しない新ルールを取り入れても、業務効率につながるのかが定かではないために実践に前向きでない人がいたり、導入や実践にかかる時間を手間だと感じる理由からスタッフに浸透せずに終わってしまう可能性があります。これらを防ぐためには行った結果として生産性向上につながった具体例を知ってもらったり、ルールをきちんと実践することの了承を得ましょう。マニュアル整理ができていない業務効率化の手順や改善方法がマニュアルを読んだだけでは分かりにくく、上手く整理できていないことがあります。作成者がある項目を誰もが知っていることであると感じて説明を省いたとしても、知識の有無により読み手が十分に理解できない場合があります。マニュアルを作るときは誰が読んでも分かる内容かどうかを重視し、用語や手順には注釈をつけて詳しく説明したり、図や表を使って理解度の向上を目指しましょう。手段が目的化してしまう業務効率化のために行っていた手段が、いつの間にかそれを達成することが目的化してしまう可能性があります。手段自体を達成することに重きをおくと、それを完了させることに意識を向けてしまい、肝心の目的から乖離した結果を招いてしまう恐れがあります。手段はひとつの考え方として念頭におき、実際の業務は状況に応じて柔軟にやり方を変更しましょう。業務効率化にオススメのツールツールを使用することで、人の手を動かすタスクにかかる時間が削減されたり、不便さが解消されます。各種ツールを使用するメリットとおすすめツールを確認しましょう。クラウドストレージインターネット上でデータの保管を行えます。パソコンのハードディスクや社内のサーバーで管理する必要がなくなるため、外出先でデータを参照したり、さまざまなデバイスやメンバーによるアクセスが可能です。おすすめのツールは以下の通りです。Google DriveGoogleが提供していて、アカウントを持っていれば無料で15GBまで使用可能。ファイルやシートは、複数人同時に共同編集や管理が可能でオフラインでも使用できるDropBox無料で2GB、有料ではプランにより2TB・3TBまで使うことができるOne Drive無料で5GBまで、有料で最大1TBまで利用できる。モバイルデバイスでは書類をスキャンして保存可能チャットツールグループを作成して複数人でチャットしたり、必要に応じて電話やビデオ会議もできます。直接顔を合わせなくても話し合いができるため、決められた場所に集まる必要がなくなります。またメールほど形式ばったビジネスマナーにとらわれることなく、気軽にメッセージを送りあえるため、やり取りにかかる時間が短縮できるでしょう。おすすめのツールは以下の通りです。Slack2000以上のアプリを外部連携できる。ワークフロービルダー機能があるChatwork国内利用者数No1のツール。タスク管理機能があるTeamsOffice365と連携できるためWord・Excel・PowerPointを使う人におすすめメモ・ドキュメントツール気付きや改善点を記したメモや議事録や報告書などのドキュメントを作成し、共同で編集・共有したり記録として保管しておくことができます。おすすめのツールは以下の通りです。Googleドキュメント複数人で同時に共同編集が可能。ドキュメントは自動で保存され、編集履歴を参照できるesaタイトルのタグ付け機能でドキュメントの振り分けが簡単にできるNotionドキュメント作成のほか、タスク・スケジュール・プロジェクトの進行管理などができるタスク管理ツールプロジェクトチームの業務フローを可視化し状況を管理したり、個人で優先順位を明らかにして仕事を効率的に進められます。おすすめのツールは以下の通りです。Jira Softwareスクラムとカンバンで管理を行う。プロジェクトの分析機能で振り返りができて業務効率に役立つTrelloリスト・ボード・カードを用いて管理を行う。無料プランはカード作成無制限で、ボード作成は10個まで作成可能Asana無料プランで15人まで使用可能。ビジネスプロセスを自動で実行できるオートメーション機能が独自の特徴。業務効率化はチームと個人の取り組みが不可欠チームで業務効率化を進めるだけではなく、ひとりひとりが日々の仕事のやり方を見直し改善しましょう。Webツールを上手く取り入れながら、生産性をさらに向上させてください。